歌声は君へと
3 女、過去を話す
▼3 女、過去を話す
――――そこは広い砂漠たった。
見渡す限り砂漠で、そこに立つと、自分はなんて小さいのかと思う。
昼夜では全くことなる顔を見せるそれが、好きだといっていた。
『もう二人だけになっちゃったね』
夜空には無数の星が輝いていた。ときおり流れ星も見える。
砂の上に座って、ぽつりとそういった言葉が、胸にしみた。
ここ数年、国が荒れていた。
王位争いが勃発したのだ。それによって賊が出入りしているともいう。賊、といってももとは民ということもある。生活難故の、という連中も出始めたというのは聞いていた。
母が死に、父も死んだ。
そして、兄も死んだ。
血を分けた妹だけが、自分の家族だった。妹は母に似ていた。ほっそりとしていて、優しい妹。
守らねば、と思った。
俺が、と。
『ねえお兄ちゃん』
『なんだ』
『死なないでね』
『!何を馬鹿なことを。お前一人残して死ねるか』
古い一族は、また一人と倒れていく。
強く。
守らねば。俺が、妹を、カーヤを。
――――なのに。