歌声は君へと
次々と倒れていく。こちらが明らかにふりだった。
「俺を庇って、死んだ」
――――お兄ちゃん!
鈍い音がした。刃が胸を貫く音だ。
たまに、そのときの夢を見る。うつむいたまま話したそれに、胸が重くなった。重くなったというのに、どこか楽になった自分がいた。
「それから、国を出た。賊を倒しながら過ごしてきたが、いつしか狙われるようになった」
「……」
「崖から落ちたから、死んだと思ったのだが」
死ぬならそれでいい。そう思っていたのに、生き残ってしまった。
そう、と小さい声が闇に消える。
「どうして、話してくれたの?」
「どうしてだろうな。わからない」
自分は、一人だ。
もう変える場所なんてない。守る家族も、なにもかも。
復讐するように、悪さを働く連中を倒しても安らぐことなんてなかった。ある時なんかは、剣を抱えたまま眠ったことさえある。
彼女はなにも言わずにしばらくいたが、やがて「私は」と口を開く。
「――――ひとりなの」
そうぽつりといい、彼女は話し始めた。
己の、過去を。
* * *