歌声は君へと
そんなことを思いながら、キアラはやはり歌の続きが思い出せず、まあいいかと違う歌をうたおうと決める。
枝を拾いながら、キアラは休憩しようと川の方へ向かう。「スノウー!休憩しようー!」と声を張り上げるとスノウが近くに走ってきた。
スノウと並び歩きつつ、歌を口ずさんでいたらふとスノウが足を止めた。
すんすんと匂いをかぐようにし、また耳を傾ける。何か来るのだろうか?匂いは…しないのだが、それはキアラがわからないだけかもしれない。
「どうしたの?スノウ」
――――わぉん!
「あ、スノウ!待って!」
一度吠えたスノウが、石の上を走っていく。
川にある石は大抵が角のとれた丸いものばかりだが、歩きにくい。ちゃんと歩かなければか怪我をしてしまうというのは、わかっている。
「スノウ!」
キアラが急いで、でも怪我をしないようにしながらスノウを追いかける。
スノウはすいすいと走っていく。
それを見ると、キアラは素直にすごいなと思う一方悔しいな、だなんて思う。あんなにすいすい走っていくのだから。
向こうは、もう川なのだが…。
そう思いながら、キアラはスノウが向かった方向へ向かう。
そして、スノウに追い付いたキアラは低く唸るスノウにべったりとくっついたまま、川へと視線を向け、あ、ともらす。
半身を川の水へつけながら、うつ伏せで倒れているそれは――――。
「ひ、人だ…!」
ちらりと見える顔から、男の人だ。
黒髪に、日焼けしたような肌。服装は――――そこまでまじまじと見ていたが、やがてキアラはイシュを呼びにいくことにしたのである。
* * *