姫恋華〜ひめれんげ〜【改稿版】
「ゆらさま、起き上って大丈夫ですか」
「うん。すごく体が軽くなったわ」
それは嵯峨の祝詞のおかげだろう。
ほっとした表情の宗明に笑いかけると、ゆらは嵯峨と斎斗に礼を言った。
「いえいえ。本当は手を出さないでいようと思ったのですけどねえ。やはりアヤカシとの初戦はなかなかきついものがおありだったようで。お二人ともなかなかの使い手でいらっしゃるのですが、まあこれからですね。これから」
「アヤカシ?あの蜘蛛がそうなのか。では、クモさまというのはいったいなんだ」
眉をひそめる新之助に、嵯峨はにっこりと笑った。
「とりあえず、ゆらちゃんを室内に連れて行ってあげましょう。話はそれからです」
新之助は屋敷の方へ視線を向けた。
主のいなくなったここへは、いずれ藩の手の者がやってくるだろう。
早々に立ち去った方が得策だと、新之助は「じゃあ、俺はそろそろ。ゆらさん、元気で」と身を翻そうとした。
そんな新之助の袂(たもと)を嵯峨が掴んだ。
「え、あのう」
「話を聞いてください。風間さん」
「いや、俺は」
「ここでお会いしたのも何かの縁。袖振り合うも、袂を掴むも、ご縁のゆえですよ」
「何の理屈です。それ」
「一緒に戦ったよしみです。さあ、参りましょう」
柔らかな物腰に反して、意外に強引な嵯峨だった。
「うん。すごく体が軽くなったわ」
それは嵯峨の祝詞のおかげだろう。
ほっとした表情の宗明に笑いかけると、ゆらは嵯峨と斎斗に礼を言った。
「いえいえ。本当は手を出さないでいようと思ったのですけどねえ。やはりアヤカシとの初戦はなかなかきついものがおありだったようで。お二人ともなかなかの使い手でいらっしゃるのですが、まあこれからですね。これから」
「アヤカシ?あの蜘蛛がそうなのか。では、クモさまというのはいったいなんだ」
眉をひそめる新之助に、嵯峨はにっこりと笑った。
「とりあえず、ゆらちゃんを室内に連れて行ってあげましょう。話はそれからです」
新之助は屋敷の方へ視線を向けた。
主のいなくなったここへは、いずれ藩の手の者がやってくるだろう。
早々に立ち去った方が得策だと、新之助は「じゃあ、俺はそろそろ。ゆらさん、元気で」と身を翻そうとした。
そんな新之助の袂(たもと)を嵯峨が掴んだ。
「え、あのう」
「話を聞いてください。風間さん」
「いや、俺は」
「ここでお会いしたのも何かの縁。袖振り合うも、袂を掴むも、ご縁のゆえですよ」
「何の理屈です。それ」
「一緒に戦ったよしみです。さあ、参りましょう」
柔らかな物腰に反して、意外に強引な嵯峨だった。