姫恋華〜ひめれんげ〜【改稿版】
そんな早朝。
坐ったままうとうとしていた新之助は、ふと人の動く気配を感じ瞼を開けた。
縁側に出ると、久賀の姿があった。
「久賀?」
呼べば、彼にしては妙に神妙な顔で振り返った。
「俺は行くわ」
「行くか」
「ああ、京に行く。さっきの陰陽師さんの話を聞いて、やっぱり京は面白そうだからな。お前も、そのうち来るといい」
「ああ、そうだな。そのうち、な」
まさかこのお調子者に微妙な友情を感じるようになるとは思いもしなかった。
久賀に京行きを進めた用人は、今頃は藩の下屋敷だろうか。
なぜ浪人者を集め京に送ろうとしていたのか。
今となってはその目的もわからなかった。
それでも久賀が京に行くと言うなら、新之助には止める理由などない。
久賀は白い歯を見せて笑うと「じゃあな」と軽く手を振って、どこまでも調子よく去って行った。
「京か……」
それを見送りながら新之助は懐手をし、どことなく不穏な空気をはらむ世の中の動きに思いを馳せていた。
坐ったままうとうとしていた新之助は、ふと人の動く気配を感じ瞼を開けた。
縁側に出ると、久賀の姿があった。
「久賀?」
呼べば、彼にしては妙に神妙な顔で振り返った。
「俺は行くわ」
「行くか」
「ああ、京に行く。さっきの陰陽師さんの話を聞いて、やっぱり京は面白そうだからな。お前も、そのうち来るといい」
「ああ、そうだな。そのうち、な」
まさかこのお調子者に微妙な友情を感じるようになるとは思いもしなかった。
久賀に京行きを進めた用人は、今頃は藩の下屋敷だろうか。
なぜ浪人者を集め京に送ろうとしていたのか。
今となってはその目的もわからなかった。
それでも久賀が京に行くと言うなら、新之助には止める理由などない。
久賀は白い歯を見せて笑うと「じゃあな」と軽く手を振って、どこまでも調子よく去って行った。
「京か……」
それを見送りながら新之助は懐手をし、どことなく不穏な空気をはらむ世の中の動きに思いを馳せていた。