姫恋華〜ひめれんげ〜【改稿版】
「おしずさんが風間さんの様子がおかしかったって言うから、どうしたのかなって思って」

「え?」

「本当はね、そこのお団子買って帰ろうと思ったの」

「ああ、なんだ。別に俺を追って来たんじゃないんだ」

 自分が思いの外がっくり来ていることに驚きながら言うと、彼女は形の良い唇をキュッと引き結んだ。

「そしたら、風間さんが泣いてるように見えたから……」

「……泣いて、ないよ?」

「うん。だから安心したんだ」

 へへと笑う彼女に、俺は何だかすごく癒されたような気持ちになった。

「ありがとう」

 彼女は小走りで屋台に行き、また戻って来ると「はい」と包みを差し出した。

「お団子。おしずさんの煮付けのあとに食べてね」

「……ありがとう」




 天涯孤独の身に温もりが戻る。

 彼女との出会いが再び俺の人生に光を灯し、俺の生きる糧となる。

 いつしか、そう思うようになった……。

 


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