トモヒーとアイツの何日間(続編)
園田一家との死闘
「今日はシチュー!!」
男が走りながら、後ろにまわりこんだ。
後部座席側の窓から入るつもりだ!

俺は高鳴る心臓を抑えながら、その機を待った。
窓から侵入した瞬間、ナイフで刺そうと考えたのだ。

そんな戦略を考えれば考えるほど、なぜか頭はひどく冷静だった。
さっきまでパニックだったのに。

何をすべきか気持ち悪いくらいに浮かぶのだ。
まず・・。

「あっ!!」
男が叫ぶ。
伸ばした腕に斬りつけると、車のドアを蹴るように開けた!

男がドアにぶつかって吹き飛ぶ。
「うるせぇ!!ぐぉっ!」
男が支離滅裂な事を言いながら壁に体を強打した。
俺は馬乗りになり、ナイフを突き立てる・・。


体の空いた穴から、水の混じった泡を吹き出し絶命する男。
尽かさず、女性を追いかける・・。
ハッシュの上からの援護もあり、サラダ用のトングを持ったまま玄関前に倒れこんだ。

園田一家からしてみたら、俺らは何なのだろうか?
見る限り、妄霊達は同じ台詞をうわ言のように繰り返している気がする。
橋本エリアマネージャーの時もそうだ。
まるで仕事の呪縛から離れられないように、接客しながら殴ってきた。

それを狩る俺らって何だ?
ハッシュって、何者なんだ?

俺は、どうして女性を切り刻んでいるんだ・・?

ふと、女性の残骸の奥に2つの光があった。
女性の残骸の奥に・・。

「トモヒー!トモヒー!!しっかりしろ!!」
2つの光は、ハッシュの両耳についたシーリングライトだった。
気付いたら身体中、ヌメリ気を帯びた液でベトベトになっていた。

「トモヒー、すごいのを見せてやんよ。」
ハッシュはヌメヌメになった俺の髪をかきあげると、興奮したように言った。
< 12 / 15 >

この作品をシェア

pagetop