からまる糸
 私は人生の終着点を目の前にして、
今までに認識していなかったことに
気付いてしまった。


 無意識に手にした携帯でダイヤル
している自分に驚いた。
 11桁の番号を入れ終わり、受話
器からはプルプルプルと呼び出し音
が鳴っている。
 
「もしもし、何かあったのか?」

「・・・(誰かしら?)
 どこかで聞いたことがある声なの
 ね?」

「あかしやの雨はあがったかい?」
と男が謎めくコトバを話しかけると
表情を変え、思い出したように話し
始めた。



「御主人様!
 どうやら、お別れが近いようです。
 癌末期を迎えたようです。」

「・・・そうなのか?」

「娘は、・・・、
 あなたのことを知りません。」

「構わない。

 あの子には既に、私を御主人様と
 認識させてある。

 よって、心配はいらぬ。」


「娘には婿を与えておきたいと、
 お願いしました。私のように
 はさせたくないと。」
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