KISS
「ん…」
レンが目を開けた。
「…ごめんね。なんか。」
「いや。いいの。辛いことあったらなんでも言って?」
「うん…」
「…ヒナ先輩…」
「なに……?」
「なんでもない…」
「うん…」
会話が途切れていく。
あたしが、泣かなかったら。
あんな風に、レンを求めなければ…―――
きっと今頃いつもみたいに馬鹿みたく騒いでたのかもしれない。
「…そろそろ帰るね。」
「あ…送る…」
「いいよ。脚、骨折してるでしょ。」
「…ごめん…」
「いいの。悪いし。」
あたしは、走って家に戻った。―――
辛くて、辛くて…
レンみたいに風みたいに走って、飛んで行きたかった。