もっと★愛を欲しがる優しい獣

「はい、あがり」

「えー!?」

数時間で色んな人生が味わえるという国民的人気のボードゲームの勝者は、子供達よりも人生経験豊富な鈴木くんであった。

「嘘だ!!インチキだっ!!」

「インチキなんてしてないよー。ねえ、ひろむくん?」

「うん!!」

一緒にチームを組んでいたひろむはニコニコと楽しそうに鈴木くんと目を合わせ頷き合っている。ルーレットの運まで鈴木くんに味方するのかと思うと、ただのゲームなのに途端に笑えなくなる。

「私もあがり……」

「あ、俺も」

陽が鈴木くんに食って掛かっている間に恵と静弥くんが順調にゴールすると、ステージ上に残る駒は陽の物だけになった。

「また俺がビリかよ!?」

……陽がビリになるのはこれで3回目である。

隣の部屋で洗濯物を畳みながら5人のやりとりを聞いていると、おかしくてついクスクスと笑みが零れてしまう。

陽がゲームの類で勝てないのは、先のことを考えずにその場の勢いで突っ走る傾向があるからだ。

恵は大人しく消極的に見えるが物事をじっくり考えてから判断する子だし、静弥くんは言わずもがな、陽よりはるかに頭の回転が良い。

(陽が勝っているのは逃げ足の速さくらいかしらね~)

悪戯を発見され怒られると分かった時の逃げ足の速さといったら、オリンピックものである。

「もう一回!!」

陽が悔し紛れに再戦を申し込むと同時にインターフォンが鳴り、急いで玄関へと向かう。

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