もっと★愛を欲しがる優しい獣
「静弥くん、お迎えが来たわよ」
「じゃあな、負け犬」
「勝ち逃げかよ!!」
静弥くんが小馬鹿にしたようにふふんと笑うと、再びクッションが乱れ飛ぶ。
(あーあ……)
止めに入ったところで聞く耳を持つ子供達でもないので、お迎えに来たお母様と世間話をして待つこと5分。
「覚えてろよ!!」
しこたまクッションを顔に食らった静弥くんが盛大な捨て台詞を吐いて、ぐったりとした様子で玄関へとやって来る。
「ケッ!!もう来んな!!」
「こら、陽!!そんな口の利き方しないの!!」
リビングから顔を出さない陽を声だけで叱りつけて、静弥くんが靴を履いている間にすみませんと、お母様に謝罪する。
(ああ、もう!!陽ったら!!)
今日の夕飯は陽の嫌いなピーマン尽くしにしてやろう。
「バイバイ、静弥」
「じゃあな、恵」
律儀に玄関まで見送りにきたのは恵だけだった。陽は拗ねているのか、姿を現さない。まあ、喧嘩していたって今度会った時にはケロリと平気な顔で遊び出すんだから子供同士の仲って難しい。