もっと★愛を欲しがる優しい獣
「想像したことあるの?」
食器棚の扉をパタンと閉めると、鈴木くんは私に小さな声で問いかけた。
「何を?」
台拭きを絞りながら尋ね返すと、背後から突然ぎゅうっと抱き寄せられた。
「俺って……良いパパになれそう?」
耳元で囁かれる鈴木くんの声に、ベッドにいる時と同じ熱いものが込められていて内心慌てふためいてしまう。
(あれ?変なこと言ったっけ?)
私は先ほどの会話を少しだけ振り返ってみた。
そして、はたと気がつく。
“鈴木くん、子育てに向いているんじゃない?良いパパになりそうね”
自分の発した言葉の意味が分かった瞬間、顔が真っ赤に染まる。
「やだ……。そんなつもりで言ったんじゃっ!!」
あれではまるで、“あなたと夫婦になりたい”って言っているようなものだ。
この場合の“良いパパ”は一般論であって!!
私達付き合い出して日も浅いし、子供なんて先の話だわ!!
っていうか、まだ恋人としてのお付き合いも板についていないのに!!
弁解しようとしている私の意志が伝わったのか、鈴木くんの身体がふっと離れていく。