もっと★愛を欲しがる優しい獣

(さあて、探しますかっ)

私は資料室に到着すると早速腕まくりをして、渡されたメモと戸棚に貼ってあった項目名を見比べた。一見雑多に置いてあるように見えるが年一回の棚卸のおかげで、それなりに分類がされている。

最初に探すのはリストの一番上に書いてあった“1980年度新卒採用試験問題”である。

(30年以上前の採用試験の資料を何に使うのかしら……)

社会情勢が大きく変わった現代においては全く役に立たなそうだ。

「変わった人もいるのねえ……」

奇妙なチョイスに首を傾げながらも戸棚から該当の資料をピックアップすると、探索の邪魔にならないようにパイプ椅子に置く。

椿のメモからピックアップした資料名に取り消し線を引いて、次の資料に取り掛かろうとしたその時だった。

ガタンと何かがぶつかったような物音がして、背後を振り返る。

「誰かいるんですか?」

声を潜め音のした方を見つめるが、名乗り出る者はいなかった。

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