もっと★愛を欲しがる優しい獣
廊下ですれ違うたびに仄かに香る甘い匂い。ハーフアップにした髪はバレッタで留めてあって。
同僚と話し合う彼女はいつも楽し気だった。
”鈴木くん”
……もし、佐藤さんが俺に向かって微笑んでくれたなら。
「渉、お前って顔広いよな」
気がつくと俺は渉に詰め寄っていた。
「まあ、それなりに?」
「紹介して欲しい人がいるんだけど……」
……もう、待てない。
佐藤さんが俺のことを思い出すまでなんて、悠長なことを言っていられない。
渉がニヤリと笑う。
「合コン来てくれるよな?受付嬢に鈴木も連れていくって宣伝しちゃったからさ」
「……わかった」
不本意だが、受け入れよう。
こうして俺は合コン参加と引き換えに、佐藤さんと一席設けることに成功したのだった。