もっと★愛を欲しがる優しい獣

鈴木くんは目尻に涙を浮かべた私の頭を撫でると、くるり向きを変え町内会長の奥様に歩み寄り、背筋のスッと伸びた綺麗なお辞儀をした。

「初めまして、いつもお世話になっております。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。亜由さんの友人の鈴木です」

町内会長の奥様は呆然としていた。

王子様と見間違ごうばかりのイケメンの鈴木くんに頭を下げられては動揺せざるをえまい。

もちろん鈴木くんが家に出入りしている怪しい男と同一人物ということには気がついていない。

「今後とも佐藤家をよろしくお願いしますね」

追い打ちをかけるように放ったトドメの一言はとてつもない破壊力だった。

……王子様モードの鈴木くんに微笑まれて、冷静でいられる人間を私は知らない。

「ふ、ふふ、あら?そう?」

町内会長の奥様は夢見心地のまま、ふらふらと千鳥足で元来た道を帰って行ったのだった。

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