もっと★愛を欲しがる優しい獣
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(お礼を言うだけなのに、なんでこんなに緊張するのよ……!!)
亜由に炊きつけられるようにして営業部までやってきた私だけれども、なかなか営業部の人に声をかけられず、柱の影からひっそりとフロア内の様子を窺うばかりである。
(……おかしい)
人見知りする方でもないのに、こんなに気まずい思いをするなんて。
私の使命は『さっきはありがとう。助かったわ』ってあいつに一言いうだけだ。
そう、一言。たった一言。
(しっかりしろ、私!!)
己を元気づけるように頬をはたいて意気込むと随分と気が楽になった。そんな時、背後からトントンと肩を軽く叩かれた。
「渡辺さん、どうしたの?」
「鈴木くん!!」
声のした方を振り返ると、私達と同期であり、亜由の彼氏でもある鈴木くんが立っていたのだった。
(うわ~!!ちょうどよかった!!)
私はこれ幸いとばかりに佐伯の所在を聞いた。