もっと★愛を欲しがる優しい獣

「なっ……!!」

(何で分かっちゃったの!?)

些細な変化にも関わらず容易く指摘されたことに、私は慌てふためいていた。

「さ、佐伯に言われたから元に戻したわけじゃないわよ!!私にはやっぱりこっちの色が合ってるかなって思っただけだもの……!!たまたまなんだから!!」

「へえー?」

相槌を打っている佐伯の様子から察するに、私の台詞はまったく信用されていない。

(本当にたまたまなんだから、そんなに嬉しそうにしないでよ!!)

必死に弁解すればするほどドツボに嵌っていくのを感じて、更なるに反抗心が生まれていく。

しかし、そんな私の意地さえも佐伯にとっては意地悪心をくすぐるスパイスにしかならない。

「たまたまねえ……?」

「な、なによっ……!!」

「いや~。別に?」

「だ、か、ら!!たまたまだって言ってるでしょ!?」

いつまで触ってるのよ!!と語気を強め、唇をなぞっていた指を振り払えば今度は耳元でゆっくりと囁かれる。

「心配すんな。こんな街中でいきなり襲い掛かったりしねえよ」

「あ、当たり前でしょ!!」

羞恥心のあまりつい叫び出すと、佐伯が弾かれたようにゲラゲラと笑い出す。

「渡辺にも可愛いとこあるんだな?」

「……どういう意味よ!?」

私はとんでもなく失礼なこの男の二の腕をこれでもかとぎゅむっと抓ったのだった。

可愛くないと言ったり、可愛いと言ったり、一体どちらが佐伯の本音なの?

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