もっと★愛を欲しがる優しい獣
その30:アイスブルー

この日は朝から雨が降るのか降らないのかはっきりしないどんよりとした薄暗い空模様だった。

ひと雨きそうだなと、空調が効いている総務のフロアから物憂げに外の景色を眺める。

デスクの上に資料を広げてはみたものの、まったく頭に入ってこない。頬杖をつきながら、大きくため息をつく。

……佐伯がいなくなる。

私はそれを冷静に受け止めることが出来なかった。

あいつが九州に転勤になるということを知っていたのは鈴木くんの他にもちらほらといて、皆一様に佐伯の転勤に驚き、残念がっていた。

(人望あったもんな……あいつ……)

明るく、社交的で、誰とでも上手く付き合える佐伯には男女問わず沢山の友人、知人がいた。

……上手いこと付き合えなかった例外と言えば、私くらいなものだ。

だからかな?

佐伯の送別会でどんな出し物をするか盛り上がる中、私だけが心の整理が出来ずにあいつを取り巻く人達の輪を遠巻きに見ていた。


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