もっと★愛を欲しがる優しい獣
……ずっと、一緒なんだと思っていた。
バカなこと言い合って、たまーに喧嘩して、それでも時々食事に行って……。
そういう当たり前の毎日がずーっと続くんだってどこかで思っていたのに、こんなにあっけなく終わりがやってくるなんて。
(やだ……もう。湿っぽくなっちゃったな……)
「椿~。佐伯くんならもう戻ったよ~?」
亜由が書棚の向こう側から呼びかけてきたのを合図に、未処理の書類が山積みになっているデスクに戻る。
「ありがと、亜由」
個人的な事情を仕事に持ち込んでいるのに、何も言わずにいてくれる亜由には頭が下がる思いがした。
ため息をつきながらディスプレイに向かうと、たまった仕事を片付けるべくキーボードを操る。佐伯が来るたびに隠れていては、仕事がちっとも捗らない。
「ねえ、いつまで居留守を使う気つもりなの?佐伯くん、もうすぐいなくなっちゃうんでしょう?」
亜由は心配そうにしているのが分かるから、余計にムキになってしまう。
「私にも分かんないわよ……」
……もしかしたら佐伯がいなくなるまで続くのかもしれない。
この胸のもやもやを気のせいだと割り切る方法なんて、誰も教えてくれないのだから。