もっと★愛を欲しがる優しい獣
その31:スパークリングゴールド
最寄りの駅から歩いて10分。
途中にあるコンビニでキンキンに冷えたビールとバラエティに富んだつまみを仕入れ、そのままてくてくと目的の2階建てアパートまで歩いていく。
階段を上って一番奥の角部屋の呼び鈴を鳴らして家主を呼び出すと、俺は今日一日の緊張を解くようにネクタイを緩めた。
「お、早かったな」
呼び鈴を押して間もなく、スエットに着替えた渉が木製の扉を開けて俺を自室に招き入れた。
「ほら、差し入れ」
「さんきゅ、鈴木」
先ほどコンビニで買ってきたビールとつまみを目の前に掲げると、渉は嬉しそうにビニール袋を受け取った。
俺はおもむろにスーツを脱ぐと、渉から勧められる前に適当に床に座った。
(何時来ても物が多い部屋だな……)
大学生の時から住んでいるという渉のアパートは、俺の部屋に負けず劣らずのカオス状態だ。
旬のマンガ、流行の洋服、ギター雑誌やらの他にこまごまとした雑貨が8畳のワンルームのあちこちに所狭しと並んでいる。
まあ、よくこれだけ集めたもんだなと自分の収集癖は棚に上げて感心してしまう。