もっと★愛を欲しがる優しい獣

「いつ引っ越すんだ?」
「来週末」

こちとらまだパッケージを開けたり閉めたりしているというのに渉は美味そうにビールを啜っている。

他人のテリトリーにはズケズケと入ってくる渉だが、意外なことに自分のテリトリーには女性を易々と入れない。

そういうポリシーなのか、単に面倒事を回避するためなのか。

風の吹くまま、気の向くまま、自由気ままに生きる渉をコントロール出来る女性がいるとすれば……。

「お前、渡辺さんとはどうなったんだ?」

「……それ、聞くか?」

渉はうししっと茶化すように笑いながら、ビールを飲み干した。

「佐藤さんも心配してるからな」

自分のことのように2人を心配している佐藤さんを見ていると、俺まで心が痛んでくる。

「結局はそこかよ……。ホンット!!鈴木はぶれないよなあ!!」

「なんとでも言えよ」

相手が渉であることをいいことに、堂々と開き直る。

彼女が心労で倒れる前にさっさと落ち着くところに落ち着いてほしいというのが偽らざる本音でもある。

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