もっと★愛を欲しがる優しい獣
「はあ。羨ましい限りだねえ……」
他人の惚気を聞かされてふて腐れたのか、渉はすっかり臍を曲げツーンとそっぽを向いた。
「なるようにしかならねえよ。あいつに関しては……初手から色々と間違えたからな……」
間違えたという自覚があるせいなのか、途中からいつになく真面目な表情になるものだから、これは何かあったなと無言で察する。
常に自分のペースを崩さない渉が珍しくへこんでいる上に焦りの色を見せている。
「わた……」
「つーかさあ!!口説いてる最中に転勤になるなんてマジでありえなくね!?」
渉は突如、あーっ!!と叫び出し頭を掻きむしると、同意を求めるように俺に迫ってきた。
(俺に言ってどうするんだか……)
上層部に言えよと心の中で突っ込むと、むさくるしい顔面を鷲掴みにして目一杯押しのける。
「だからさっさとケリつけとけば良かったのに……」
いつまでもグスグズボヤボヤしているから肝心な時に困るのだ。
その無能ぶりは見ているこっちの方がいい加減焦れったくなってくるほどであった。
何度背中を蹴り飛ばしてやろうと思ったことか……。