もっと★愛を欲しがる優しい獣

……甘い、甘すぎるぞ。

口からポロッと餡子の欠片が落ちていく。

間違っても饅頭に入っていた餡子の話ではない。

長年恋愛事を避けていた反動なのか、鈴木に過剰に愛されているせいなのか。

姉さんは時々、鈴木と付き合っていることに対して愚痴を零す。

ちなみに他人はそれを惚気と呼ぶ。

性質が悪いのは姉さんが本当に困っていて、私に相談に乗って欲しいと本気で思っていることだ。

(……勝手にやってよ)

付き合いきれないとさじを投げたくなるが、そこは実姉の為。

私はにこやかに答えるのだった。

「大丈夫。あのおんぼろ眼鏡姿の鈴木を見ても素敵だって思っていられるのは姉さんぐらいよ」

……それにしても姉さん、ちょっと単純過ぎやしませんか?

こうして、今日も佐藤家の夜は更けていくのだった。

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