もっと★愛を欲しがる優しい獣
その5:鈴木家の秘密
「鈴木くんのお父様ってお歳の割に若々しくて素敵よねえ……」
テレビ番組に出演している鈴木氏はにこやかに観客に手を振っていた。
肌つやや凛々しい立ち姿は壮年期を過ぎているとはとても思えない。
なにより鈴木くんにそっくりな顔立ちに無意識にときめいてしまいそうになる。
……いけない、いけない。相手は鈴木くんのお父様だ。
「やめてよ」
隣に並んで一緒にテレビを見ていた鈴木くんが苦々しげに言った。鈴木氏との冷戦状態は未だに終わりを迎えていない。
「あら?鈴木くんだって歳を取ったらこんな風になるのよ?」
雪解けを助けようとからかうように言えば、鈴木くんは私の肩を痛いほど掴んだ。
その顔が引きつっている。