もっと★愛を欲しがる優しい獣
「誰かさんが避けまくるせいで、まともに会話もできなかったからな。まったく……説明する隙ぐらい与えろよ?」
「ごめん……」
滅多に本気で怒らない渉に怖い顔で睨まれて、シュンと落ち込んでしまう。
本当に自分のことだけでいっぱいいっぱいになっていたのだと反省する。
「椿、返事は?」
私をまっすぐ見つめると、渉はなおも選択を迫ってくる。
優柔不断な私の心の天秤は不均衡になって、ゆらゆらと揺れる。
転勤が2年という期間限定だと聞いて、正直ホッとしている。あいつと離れがたいのも、これまた疑いようのない事実だ。
(でもっ!!でも……)
……たかが2年、されど2年だ。
電車で60分の距離にいても浮気されたのに、飛行機で数時間の距離なんて上手くやっていけるのかしら?
ましてや相手はちゃらんぽらんなことに定評のある男なのに……。
そんな私の心中を察したのか、渉はここぞとばかりに畳みかけてくる。