もっと★愛を欲しがる優しい獣

「毎日、電話するから」

「……どうせ続かないくせに」

無理難題を自ら課す渉に呆れて、ふいっと顔をそむける。

自分から提案するならもっと簡単なものにすればいいのに、この男は調子の良いことばかり言うんだから……もう。

「会いたいって言われたら直ぐに飛んでく」

「バカなの?そんなの無理に決まってるじゃない!!」

バカバカしい押し問答をまだ続けようとするから、こっちだって段々腹が立ってくる。

往復するのに一体いくらすると思っているの!?

(大体、私はこう見えても結構寂しがり屋なのよ……!!)

会いたいなんて本気で口にしようものなら、旅費の方が先に尽きてしまうのは目に見えている。

しかし、頑なに拒めば拒むほど渉は勢いよく食らいついていく。

「不安になったら好きって言ってやるよ」

「……じゃあ。今、言って」

口を尖らせてそう答えると今度は渉の方が、鳩が豆鉄砲を食ったように面食らっていた。

……ええ、既に大いに不安というか、不満を持っているわ。

だって、ずるいんじゃない?

「私、まだ渉に何も言われてないもの……」

そりゃ初心でもないし、こうして部屋に連れ込まれている以上、全部分かってはいるけれど、それとこれとは話が別だ。

……身体から始まった関係だからこそ言われたい一言がある。

そっちだって、こういう繊細な乙女心が分からないほど経験が浅いわけでもないでしょう?

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