もっと★愛を欲しがる優しい獣

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「もう!!渉ってば最近全然連絡よこさないのよ!!」

私は亜由にそう愚痴るといつものパスタランチの載ったトレイを少々乱暴にテーブルに置いた。

一向に鳴らない携帯を前に堪忍袋の緒が切れそうになっているのは、一度や二度のことではない。

3日以上連絡がないのはこれで5度目だ。

毎日電話するとかほざいたくせに、たった三カ月でこの体たらくなのかしら?

はは、笑っちゃうわね?

「ホント、今度こそ別れようかしら?亜由はどう思う?」

「……そういう割には椿ってばいつも楽しそうにしているじゃない」

私の愚痴を黙って聞いていた亜由はお弁当をつつきながら、すべてわかっているのよ?と菩薩のように微笑んだ。

うぐっと大好物のパスタランチが喉に詰まる。

そりゃあ……亜由には多大なご迷惑とご心配をおかけしましたけど。

何を言っても生温かい目で見つめ返すのは、そろそろ勘弁願いたい。

「はあ……見たかったなあ。佐伯くんが椿をさらっていくところ……」

鈴木くんから送別会であった出来事の一部始終を聞かされてから、亜由は口を開けばそればかりである。

どうやら、亜由が悟りの境地に至ったのはそのせいらしい。

亜由に何をどう伝えたのか知ってしまうのも怖い気がして、私はまだ鈴木くんに詳細を聞けないでいる。

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