もっと★愛を欲しがる優しい獣

「大丈夫?鈴木くん……」

「冷たい……」

幸いなことに洗面所には手の届くところに山ほどタオルが置いてあった。

棚に置いてあったものを適当に一枚とって、鈴木くんの頭に被せてゴシゴシと水を拭き取っていく。

(もう、ひろむったら……!!)

この頃はすっかり陽の子分としての役割が板についてきたのか、日に日に悪戯が目についてくるようになってしまった。

どうしたものかと心配しながら、ひたすらタオルで鈴木くんの頭を拭いていると、途中でその手を制止された。

「そのくらいで平気だよ。あとは適当に乾かすから」

頭に被っていたタオルを肩にかけて微笑むと、鈴木くんはコンタクトレンズを外すべく鏡とにらめっこを開始するのだった。

(あれ……?)

……無造作に手櫛で整えた彼の濡れ髪を見て、私は何か心に引っかかるものを感じた。

「どうしたの?」

鏡越しに鈴木くんの顔をじいっと見ていたことは直ぐにバレてしまって、異変の原因を尋ねられてしまう。

(この家?ううん、違う。じゃあ、会社?そうだわ!!)

「鈴木くんのこの髪型……会社で見たことがある気がして……」

違和感の正体を無事突き止めたわけだが、謎はさらに謎を呼んだ。

完璧な王子様の鈴木くんの乱れ髪が会社で見られるはずないのに……おかしいわよね?

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