もっと★愛を欲しがる優しい獣

「ココアをくれた……?」

あの時、声を掛けてくれたのは鈴木くんだったの……?

本当に本当に?だってこんなの信じられない!!

「思い出した?」

「あ、あの……。やだ、どうして気が付かなかったのかしら……」

あの人は確かに“営業の鈴木”と名乗っていた。

(そうよね。よく考えたら鈴木くんだって営業部だし、鈴木だし……)

あれ以来、社内ですれ違うこともなかったから、転勤してしまったか他支社からたまたま応援に来た人なのかとばかり思っていた。

今振り返ればヒントは色々とあったはずなのに全く気づかなくて恥ずかしい。

……鈴木くんはちゃんと覚えていたから余計にだ。

「参ったなあ……。まさか、今日思い出すなんて……」

鈴木くんは感慨深そうにしみじみと言うと、ぎゅうと私を抱きしめた。

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