もっと★愛を欲しがる優しい獣
「麦茶でも飲むか?」
「うん」
ずっと寝ていたせいでひどく喉が渇いていたのは事実で、私は樹が持ってきてくれた麦茶を一気に飲み干した。
「鈴木のプロポーズ、一体どうするつもりだ?」
率直に尋ねられると、頭上でボンっと何かが爆発する。
「わ、わかんないわよっ……!!プロポーズなんて初めてだもの!!」
照れや焦りをぶつけるように、ついクッションをぎゅうぎゅうと締め上げてしまった。
「まさか、自分にそういう相手が現れると思ってなかったもの……」
鈴木くんと付き合うことになった時だって夢みたいだったのに、ましてや結婚となると想像もつかない。
結婚の機会に恵まれたとしても、まだまだ先のことだと思っていた。
だから、鈴木くんからプロポーズされて、すっごく……ものすっごく!!びっくりしたけれど、その反面嬉しくもあって。
心がふわふわと浮足立つ一方で、決して忘れようのない現実を見据えて冷静になっている自分もいる。
「結婚なんて今は……まだ無理よ……」
例えばあと5年。ううん、10年後なら鈴木くんとそういう未来が築けたかもしれない。
けれど今はまだダメだ。
私と結婚するということはすなわち、6人の妹弟の面倒も一緒に見るということに等しい。
私が背負っているものを、鈴木くんに押し付けるようなことはできない。
鈴木くんには鈴木くんの人生があるのだから、思うとおりに生きて欲しい。