もっと★愛を欲しがる優しい獣
「あ、そーだ」
……かと思いきや、何かを思い出したようにすぐに起き上がり、毛玉だらけのジャージのポケットからなにやらゴソゴソと取り出すと、握りしめた拳をまっすぐ私の前に差し出した。
「はい、ご褒美」
「え?」
「初めて話した時のことを思い出したらご褒美をあげるって言ったでしょ?」
そういえば……そんなことを言っていたような気もするけど。
(すっかり忘れていたわ……)
ここは素直に受け取っておこうと、拳の下に両手を出すとポトリと落とされたのは驚くべき代物だった。
鈴木くんの言うご褒美は、明らかにご褒美のレベルを超えている。
少なくとも今にも穴が開きそうなボロボロのジャージのポケットに入れておいて良いものではなかった。
「わあ……!!キラキラしてる……!!」
「すげえ!!強そう!!」
恵と陽の感想は各々異なるが。
……それは間違いなく台座にダイヤモンドが嵌まった指輪だった。
「陽くん……この指輪は装備品じゃないからね……?くれぐれも間違えて覚えないでね!?」
……ダイヤモンドは決して変わらない固い絆の象徴だ。
鈴木くんは私の左手の薬指に指輪を嵌めると、満足そうにうっとりと囁いた。
「絶対に幸せにするから……」
これ以上何も言えなくなって、鈴木くんの腕の中に飛び込む。
私、十分幸せなのに……これ以上幸せにしてもらったら罰が当たっちゃうわ。
それでも、幸せ過ぎて罰が当たった最初の人間になれるのなら本望だけれど、今はもう少しだけこの幸せに浸っていたい。