もっと★愛を欲しがる優しい獣
「身体は洗った?」
「そんなのとっくだよ」
風呂釜に浸かっていた陽くんと恵ちゃんは公園にいた時のように、湯を互いに掛けあっている。
風呂場の壁には二人の為に九九の一覧表が貼ってある。湯に浮かべて遊ぶあひるのおもちゃはひろむくんの物だろう。
(家庭のお風呂って感じだな)
シャンプーを手に取って、己の頭をごしごしと洗う。
同じようにシャンプーハットを被ったひろむくんの頭を洗ってやると、嬉しそうに手を叩いた。
身体を綺麗にして湯に浸かると、他人の家の風呂だというのに何だかほっと落ち着いた気持ちになる。
4人一緒に風呂釜に入ってしまうと一際狭く感じる。
「潜りっこしようぜ!!」
「いーち、にーの、さーん!!」
湯の底に沈んだ3人を微笑ましく思う。
(元気だなあ……)
なんだか年寄りくさい感想しか浮かばない。
……そうやって、油断しているのがいけなかった。