もっと★愛を欲しがる優しい獣
「僕が一番!!」
ひろむくんはそう言って湯の中から飛び出すと、風呂場どころか脱衣所から出て行ってしまった。
……当然、身体も拭かずに。
(それは一番じゃない!!)
潜りっこのルールは分からないが、きっと最後まで潜っていられた人物が一番であろう。
「こら!!待て!!」
俺は慌ててひろむくんを追いかけた。
身体を泥だけにしただけでは飽き足らず、廊下まで水浸しにしたら佐藤さんに何を言われるか。
辛うじて腰にタオルを巻いて、廊下を追いかける。
「お姉ちゃーん!!」
「ひろむ!!身体は拭いたの?」
ひろむくんは着替えを持ってきた佐藤さんを発見すると、するりと脚に抱き付いた。
追いかけてきた俺を見るなり、手から着替えが滑り落ちる。
「もう!!何で裸で出てくるのよ!!」
そう言って背を向けても、真っ赤に染まった耳までは隠しきれない。
「風呂上がりだし……」
……この初心な反応。たまらない。
「佐藤さんも一緒に入る?」
「入りません!!」
半ば本気の提案はすげなく却下された。