もっと★愛を欲しがる優しい獣
私はひとまず、我が家に電話を掛けた。
「もしもし」
<姉ちゃん?>
樹が出てくれてホッとする。樹がいれば家のことは大丈夫だろう。
「そう、亜由よ。雨が凄いけど、そっちは大丈夫?」
周囲を見渡せば私と同じように家族に電話している人が大勢いた。
<ああ。こっちは皆、家にいるよ。雨は降っているけど>
電話越しにひろむの泣き声が聞こえてきた。また、陽にでも泣かされているのか。陽はゲームのことになると年下の弟にも容赦しない。
「今日は遅くなるわ。電車が運休になったの」
<帰れるのか?>
「仕方がないから隣の駅まで行って迂回して帰るわ。冷凍庫に作り置きのおかずがあるから、先に食べていて」
<わかった。姉ちゃんも気を付けて帰って来いよ>