もっと★愛を欲しがる優しい獣
私が初めて好きになった人には。
……好きな人がいました。
それは、同じ職場で働く私の先輩でした。
佐藤先輩を羨んではいけないことも、憎んではいけないことも分かっている。
あの人が佐藤先輩を選んだ。私は選ばれなかっただけ。
佐藤先輩自身はとても良い人で、後輩の私にも丁寧に仕事を教えてくれる。
きっと、総務部の中に佐藤先輩を嫌いな人なんていない。
だからこそ、苦しかった。
いっそのこと佐藤先輩がとっても嫌な人だったら、対抗心を燃やして張り合えたのだろうに……。
佐藤先輩はあろうことか恋敵である私に堂々と宣戦布告をしてきたのだ。
“負けないわ”
……あの日の佐藤先輩の表情はきっと忘れない。
愛されて、幸せでたまらない。満ち足りたように微笑まれたら、もう敵わない。
きっと、そうさせたのはあの人だ。