もっと★愛を欲しがる優しい獣

(ついでだし、消しに行こうかな)

総務部の仕事のひとつは社内の設備環境の保全である。

たかが蛍光灯。されど蛍光灯だ。

正面入口は既に施錠されていたので、私は裏口から会社の中に入った。

エレベーターで8階まで行き、女性社員のロッカールームに入って、カーディガンからキーケースを取り出す。

今度こそ忘れないようにバッグにしまうと、今度は10階へと向かった。

最低限の明かりしかない、廊下は薄暗い。

多数の人間が出入りしている昼間とはまるで違う雰囲気に、思わずバッグの持ち手を握りしめる。

だから、営業部のフロアに人影が見えた時は本当に驚いた。

「鈴木さん?」

見覚えのある背中に向かって問いかけると、人影はクルリとこちらを振り返る。

「……あれ?関谷さん」

煌々と光る蛍光灯の下には、私の憧れてやまない鈴木さんの姿があった。

こんな時間だというのにネイビーのスーツをかっちりと着こなしていて、くたびれた様子はない。

今日も間違いなくきっちりと仕事をこなしてきたに違いない。

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