もっと★愛を欲しがる優しい獣
コンビニでニャンプと飲み物を買って、近所の公園で月見と洒落こむ。
ベンチから空を見上げれば、月は淡い光を放っていた。
“私を月に連れてって”そんな歌があったことをふと思い出す。
恋焦がれた人に愛を強請るのに“月に連れてって”なんて、遠回しな言い方をするものだと、初めて歌詞を読んだ時には不思議に思った。
けれど、今なら少しわかる。
鈴木くんにストレートに愛を強請ったら、私なんてすぐさま溺れて死んでしまいそうだ。
「珍しいね。こんな時間に呼び出すなんて」
「たまには良いでしょ」
コンビニで買ったココアの缶のプルタブを開けながら尋ねる。
「何か……あったの?」
「佐藤さんは俺のどこが好き?」
……私は思わずココアを吹き出しそうになった。
「ど、どうしたの?急に?」
(なんか、今日の鈴木くん。絶対、変だわ)
缶をぎゅうっと固く握りしめる。
隣に座っている鈴木くんから醸し出される怪しい雰囲気に、私の心臓は不整脈を打っていた。
「……俺が欲しいのは佐藤さんだけだ」
ココアを持っていた手がゆるゆると解かれていく。
「そう思ったら会いたくなった」
缶を取り上げてベンチの端に置いた鈴木くんは私の手に指を絡ませた。