もっと★愛を欲しがる優しい獣
「美味い?」
櫂くんは熱々の麺にふーふーと息を吹きかけながら無言で頷いた。
「それは良かった」
火傷しそうなくらい熱いスープをれんげですくうと、具と一緒に口の中に放り込む。
馴染みの店を気に入ってもらえて嬉しかった。
醤油ラーメン大盛り野菜ましましは、俺達の胃の中にどんどん収められていく。
「……お前の家はおかしいって言われたんだ」
櫂くんがそう話し出したのは、麺が残り半分に差し掛かった頃だった。
「両親が家にいないのは今に始まったことじゃないし、職業柄変人扱いされるのも別に良いんだけど。亜由姉さんのことまで悪く言うから……。それでついカッとなった」
「そっか」
……やっぱり佐藤さん絡みだったか。
頑なに沈黙を続けていた理由が予想通りで少しホッとする。
「佐藤さんにごめんなさいって謝っておきなよ。心配性なんだから、あの人」
「知ってる。だから言わないんだ」
櫂くんは勇猛果敢に残りの麺に食らいついていった。
(頑固だなあ……)
小さい騎士は今日も彼女を静かに守っている。
俺も負けないように、どんぶりに残った野菜にかぶりついた。