もっと★愛を欲しがる優しい獣
「佐藤さーん……。そろそろ機嫌直してよ……」
「ダメです。鈴木くんは1メートル以上近くに寄らないでください」
クッションとひろむくんのおもちゃで作られたバリケードの中で膝を抱えた佐藤さんの怒りはしばらく解けそうにない。
(仕方ない……)
俺は甘んじて切り札を出した。
「今度、ケーキ買ってくるから」
「……ケーキ?」
佐藤さんがケーキという単語にピクリと反応する。
「約束」
そう言ってバリケードを乗り越えて頬にキスを贈れば、佐藤さんの顔が真っ赤に染まる。
「……生クリームたっぷりのが良いです」
「了解」
……ようやく手に入れた彼女の隣はきっと、陽だまりの中にいるような心地。