ダイスキなアイツ──後輩へ──
「 うう〜さぶっ!」
体育館までの渡り廊下は長くて、とても冷たい。
彼女は、下を見ながら俺の一歩後ろを歩いた。
…俺、怖い顔してねぇよな。
なんで後ろを歩くんだ?
隣、歩けばいいのに。
「あの…。 」
渡り廊下に小さくて高い声が響いた。
これはまさか…この子の声か?
俺は勢いよく振り返ると彼女を見た。
「 名前、なんて言うんですか? 」
ええええ!?
名前…?
「俺の名前? 」
「 はい、そうです。」
少女は恥ずかしそうに、俺の顔を見た。
「 北里千翔人だ、よろしくな!」
あの子が少しでも、絡みやすくなるなら、おかしいくらいに明るく振る舞おう。
とりあえず、怖いとか思われるのは、ちょっと…いや、すごくイヤだ。