彼=浮気【完】
急に押し倒されて、リビングでそのまま。
終わったあと、そそくさとお風呂に入ったカナちゃん。
酔いが覚めてバレるといけないから
ちゃんと綺麗に掃除した。
そのあと、焦って風呂場から出てきたカナちゃんに
何もなかったかのように接するのは
すごく大変だったのを覚えてる。
カナちゃんが寝たあとに
少し離れた公園で声をあげて泣いたっけ。
きっと、あのことを覚えてないだろうな。
「ニコ…もしも、ってこともありえるんだよ…?」
「………そうだね」
「そのままじゃだめだよ!?」
「わかってる!!けどっ……!!」
きっと私は知りたくないだけ。
もし、お腹の中に赤ちゃんがいたら。
その父親は確実にカナちゃんだから。
カナちゃんを縛ってしまうことになるから。
「ニコっ!!確かめようよ!?大事なのはニコの体でしょ!?」
「………知りたくないっ!!」
「ニコっ!!」
私はそのままその場を離れた。
走って、走って。
気づけば知らない海に来ていた。
静歩の家からそう遠くはないはずだけど。
なんだかその海が私を優しく包み込んでくれてる気がした。
大丈夫だよ、っていってくれてる気がした。
「赤ちゃん…いるのかな?」
お腹を撫でながら呟く。
もしもいたら?
カナちゃんに話さなきゃいけない?
この子にまで辛い思いさせるの?
そんなの絶対やだ。