彼=浮気【完】


静歩ちゃんは、水を一口飲み、一息ついて口を開いた。

「体調はどうですか?」

「え、あぁ、熱のこと?」

「はい。目の前で倒れましたから」

「あ、そうなんだ…。ごめん、迷惑かけて…」

「いえ、別に私は迷惑じゃなかったので。それで大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。ちゃんと休んだし」

「そうですか。なら、よかったです」

そこからしばらく沈黙が続いた。

なんか…静歩ちゃん珍しい。

いつもならいいたいことバンバンいうはずなのに。

「そ、そういえばさ?静歩ちゃんとにぃは、どうやって仲良くなったの?」

「あぁ…。元々仲良くはなかったですよ。ただのクラスメイト、って感じで。中2の時に同じ班になって、話してみたら、意外と相性が良くて、今に至ります」

「へぇ、そっか。中学から仲がいいってにぃも話してた。中学からあぁなの?」

「あぁって?」

「なんていうか……癒しキャラ?」

「中学からですよ。おかげで周りの男子はメロメロ。毎日告白されてました」

「やっぱ、中学からモテてたんだ…ww」

「それは狩那緋先輩もですよね?」

「え?俺?w」

「そのルックスでモテないとかいったら殺しますから」

ニコッと笑いながらいう静歩ちゃん。

「……怖いよw 自分でいうのも嫌だけど、モテてたよ」

「でしょうね。だから浮気なんか…」

「それは反省してる。ほんと、バカなことした。身勝手なことでにぃを泣かせた」

「わかってますね。けど、一つだけ覚えてないこともありますけど」

覚えてないこと…?

確かこの前もいってたよな…。

「この前もいってたよね?どういうことなの?」

「……私の口からは話せません。けど、いつか知る日が来ます。本当に…覚えてないんですよね?」

「何を?」

「とっても重要なことです。あなたは……ニコを…孤舞 虹恋を愛していますか?」

とても苦しそうな顔で聞いてくる静歩ちゃん。

「どうしてそんな苦しい顔……」

「愛していますか…?今も変わらず…」

「………当たり前だよ。にぃがどんなに俺を嫌おうと、拒絶しようと、にぃへの愛は一生変わることはない」

「………なら、いいんです。狩那緋先輩、ニコはあなたが幸せになることを望んでます。自分じゃない、他の誰かと」

「え?」

「自分じゃ…幸せにできないって思ってるんです。そんなことないのに…。バカですよね、ほんと…」



< 50 / 82 >

この作品をシェア

pagetop