彼=浮気【完】
静歩ちゃんは、水を一口飲み、一息ついて口を開いた。
「体調はどうですか?」
「え、あぁ、熱のこと?」
「はい。目の前で倒れましたから」
「あ、そうなんだ…。ごめん、迷惑かけて…」
「いえ、別に私は迷惑じゃなかったので。それで大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。ちゃんと休んだし」
「そうですか。なら、よかったです」
そこからしばらく沈黙が続いた。
なんか…静歩ちゃん珍しい。
いつもならいいたいことバンバンいうはずなのに。
「そ、そういえばさ?静歩ちゃんとにぃは、どうやって仲良くなったの?」
「あぁ…。元々仲良くはなかったですよ。ただのクラスメイト、って感じで。中2の時に同じ班になって、話してみたら、意外と相性が良くて、今に至ります」
「へぇ、そっか。中学から仲がいいってにぃも話してた。中学からあぁなの?」
「あぁって?」
「なんていうか……癒しキャラ?」
「中学からですよ。おかげで周りの男子はメロメロ。毎日告白されてました」
「やっぱ、中学からモテてたんだ…ww」
「それは狩那緋先輩もですよね?」
「え?俺?w」
「そのルックスでモテないとかいったら殺しますから」
ニコッと笑いながらいう静歩ちゃん。
「……怖いよw 自分でいうのも嫌だけど、モテてたよ」
「でしょうね。だから浮気なんか…」
「それは反省してる。ほんと、バカなことした。身勝手なことでにぃを泣かせた」
「わかってますね。けど、一つだけ覚えてないこともありますけど」
覚えてないこと…?
確かこの前もいってたよな…。
「この前もいってたよね?どういうことなの?」
「……私の口からは話せません。けど、いつか知る日が来ます。本当に…覚えてないんですよね?」
「何を?」
「とっても重要なことです。あなたは……ニコを…孤舞 虹恋を愛していますか?」
とても苦しそうな顔で聞いてくる静歩ちゃん。
「どうしてそんな苦しい顔……」
「愛していますか…?今も変わらず…」
「………当たり前だよ。にぃがどんなに俺を嫌おうと、拒絶しようと、にぃへの愛は一生変わることはない」
「………なら、いいんです。狩那緋先輩、ニコはあなたが幸せになることを望んでます。自分じゃない、他の誰かと」
「え?」
「自分じゃ…幸せにできないって思ってるんです。そんなことないのに…。バカですよね、ほんと…」