彼=浮気【完】


目を伏せながら泣きそうな声でいう静歩ちゃん。

チカちゃんも静歩ちゃんも何かを知ってる。

でも何も教えてくれない。

「俺は、にぃ以外とは幸せになれないと思う。いや、にぃ以外とは幸せになりたくない。実はチカちゃんからもいわれたんだ」

「チカさんから…?」

「何もなかったように過ごせ、にぃのことは忘れろってね」

「忘れるんですか…」

「忘れられるわけがないよ。にぃと一緒にいた時間は、かけがえのないもの。忘れてしまったら、俺はにぃを二度も裏切ることになる」

「……そうですね。よかったです、狩那緋先輩の口からその言葉が聞けて」

「俺はそこまで腐ってないよwww」

「私、少し勘違いしてました。最低な男だって思ってましたw」

「ストレートだなぁww まぁ、周りからすれば浮気して女泣かせる最低野郎だからねw」

「けど、ちゃんと想ってたんですね。見直しました」

「元々告白したの俺だしね。静歩ちゃんは、本当ににぃが大切なんだね」

「当たり前ですよ。ニコは、私に光をくれましたから。いつも隣で笑っててくれました。その笑顔にどれだけ救われたか…」

「俺もわかるよ。にぃは、ただ隣にいるだけで安心できる」

「………狩那緋先輩。もし、ニコが全てを話す日が来たら…聞いてあげて下さいね」

「…わかってるよ」

「話したいことはこれだけです。今日は時間とらせてすみません」

「いや、俺のためにもなったし。ありがとう、静歩ちゃん」

「それじゃあ……また」

軽く会釈をして、静歩ちゃんは店を出ていった。

俺もそろそろ行こう。

「今は1時すぎ…とりあえず家帰ろう」

今日はゆっくりしていたい。

店から出て、家へと向かう。

目の前から、男女が歩いてきた。

きっとカップル。

2人とも笑顔で、幸せそう。

俺があんなことしなければ…今でも笑い合えてたのか…。

そんなことばっかり考える。

今更後悔しても遅い。

これから先、どうしていくか。

「後悔しても遅いんだ…」

家につくと、リビングへ行き、テレビをつけた。

ソファに体をあずけ、目を閉じる。

テレビの内容なんか頭に入ってこなくて。

思い浮かぶのはにぃの笑顔と泣き顔。

心を占めるのは、幸せにしてあげれなかった後悔。

「にぃ…ごめんね」

~♪ ~♪ ~♪ ~♪ ピッ

「もしもし?久し振りだね、月希(ルイ)」

『あぁ、久し振り』

神崎 月希(カンザキ ルイ)

高校からの親友。

「元気してた?」

『まぁまぁだ。お前は色々あったらしいな。虹恋ちゃんと別れたんだろ?』

「何でそれを?」

『新廼情報』

「あぁ…チカちゃんね…。で、何?急に連絡してきて」

『大学、来ねーの?』

「あー…なんか行く気しない」


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