MIRROR-ЯOЯЯIM
「…あれ?」

痛みは感じられなかった。代わりに…私を縛っていたロープが、斬られていた。

「えっ…?」

驚いて癒紀の方を見ると、その目には涙が溜まっていた。

「やっぱり…こんなの無理だよっ…!」
「癒紀…?」
「…ちょっと待ってて。すぐに終わらせるから。」

そう言うと、癒紀は私に背を向けた。

「やっぱり…こんな命令、従えないから。」
「あ!?」

ヤンキー達が癒紀をにらみ、荒れた声を上げる。

「襲われてもない限り…傷つけられない…。」
「ふざけんなオラ!」

ナイフを持ったヤンキー達の集団が、癒紀をぐるりと取り囲む。

私は何も言えず、ただその場にたたずんでいた。

「…四番、尾鞭(ウィップ)。」

すると癒紀の尾の一本が鞭に変わり、ヤンキー達をなぎ払った。

…これは、現実なのか?

でも、ここの人達は私達の世界で言う「妖怪」だ。何が起きても、驚くべきことじゃない。

ヤンキー達は立ち上がり、ナイフを持つと、癒紀の方に走り出した。

「二番、尾銃(ガン)。」

今度はさっきとは違う尾の先端が銃口へと変わり、それは正確に、ヤンキーに向けられた。
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