MIRROR-ЯOЯЯIM
「…ちょっ、いきなり変なこと言わないでよ! え、何、今のセリフ? ほ、本気で言う人がいるとは思わなかったわ…。」

これが、私の精いっぱいの照れ隠し。私って、演技の才能ゼロだな…。

「本気で言っちゃダメなのか?」
「ダメに決まってるでしょ! だって、その…。」

そして、言葉がすぐに詰まる。

「お前、嘘下手すぎ。」

そして隙を見つけられ…私は、抱きしめられてしまう。

「…な、何よ…。」
「今までお前が俺のことディスってきた分のしわ寄せだから、我慢しろよ。」

別に、我慢をしているつもりなんてなかった。むしろ、この瞬間まで、我慢していた。

都樹を抱きしめたい。都樹と一緒にいたい。都樹に好きになってもらいたい…。

出会った頃は、こんなことを思うようになんてなるわけがない、と思っていた。

だって、私の知っていた「押上」は遊び人で、軽い奴で…。

だけど、都樹は違う。

都樹は、私の理想…に、近づいている(さすがに言いきることはできない)。確実に。

都樹の左肩の上で、私は都樹の体温と、俺様な冷たさの中の優しさと、その他もろもろが重なり合い、溶けあった「恋」を感じていた。

「もう俺を理奈不足状態にさせんなよ?」
「はいはい。そうなるとまたうるさそうだからね~。」

思いを直球で伝えるのは、恥ずかしいし、まだ早かった。
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