MIRROR-ЯOЯЯIM
押上に連れられてやってきたのは、屋上だった。

「…何?」
「…もしかしてなんだが、お前…鏡の奥から来たのか?」
「…えっ…?」
「当たりか。…ってことは、この世界で言う『妖怪』で、お前の世界で言う『人間』っていうわけだな。」
「…何で知ってるの…?」
「何となく。勘ってやつだ。」

やっぱり逆だ。私の知っている押上は、勘が外れることで有名なのだが…。

「それだったら、いくつか説明しとかないとな。一回しか言わないから、よく聞けよ?

まず、俺達のいるこの世界は、お前のいた世界と鏡で繋がっている。だがお互いに行き来することはできないはずなんだ。お前がどうやってこっちに来たのかは分からないけどな。

だから、鏡の中には別の世界があるんじゃないかっていう迷信がこっちの世界では成り立ってる。もしお前があっちの世界から来たっていうのがバレたら、お前は色んな意味で狙われるはずだ。

だから…ここでは、何かの『妖怪』になり済ましとけ。」
「なり済ますって…?」

すると、押上は頭頂部の髪をかき上げた。そこには、オオカミの耳のようなものがついていた。

「例えば、俺はオオカミ男。お前が校門で会った久尾は九尾の狐。先生はだいだら法師。こんな感じで、この世界の人は何かしらの『妖怪』なんだ。だからお前も、何かの『妖怪』のフリをしといた方がいいってことだ。」
「そ、そんなこと言われても…何になったらいいの?」
「そうだな…とりあえず、ちょっと頭借りるわ。」
「え?」

押上は私の髪を触り、手に持っていたワックスを私の髪につけた。

「はい、これで猫娘の出来上がりだ。」
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