MIRROR-ЯOЯЯIM
私がもし雲外鏡だとしたら…私は、ここにいるべきだ。

でもだからこそ、私は都樹と別れなきゃいけない。

私は…都樹を騙していたから。

フィクションではよく「嘘でもいい」とかいうセリフはあるけど、それはやっぱり、フィクションだからありえるんだ。

都樹が、私のことを好きでいてくれるわけがな…。

「理奈。」

後ろから都樹に抱きつかれる。都樹の吐息が、私の肩に優しく降る。

「ちょっと待ってろ。お前は絶対、俺のモノにするから。」
「あらあら、どれだけ俺様なのよ、そっちの押上都樹は?」
「お前は黙ってろ、ニセ理奈。」
「さっきも言ったでしょ? 私が本物の、人間界の現川理奈。そっちにいるのが妖怪なのよ。」
「俺にとっては、の話だ。」
「なるほどね…。そういう少女マンガとかでよくあるセリフを言って、それでそっちの現川理奈を騙そうとしてるんでしょ? 確かに、そういうセリフには弱そうだもんね…。」
「いいから黙ってろ!」

都樹が声を荒げた。そして、都樹の体が、さっきと同じようにオオカミに近いものへと変わって行った。

「自分で調節できるようになったの?」
「いや…もう一回、月を見ただけだ!」

都樹は地面を蹴り、向こうにいる私の方へ跳んだ。爪を立て、攻撃態勢に入りながら。

私は、戦闘をただ傍観しているしかなかった…。
< 52 / 56 >

この作品をシェア

pagetop