MIRROR-ЯOЯЯIM
「えっ…?」

私は自分の頭を触った。頭の右と左に、少し盛り上がった部分ができている。

「これ…耳?」
「ああ。お前、特別な力とか何も持ってないだろ? だから、特別な力が特にない猫娘にしといたから。」
「特別な力?」
「例えば俺だと、満月を見ると体力とかが倍増する代わりに暴走する、とかな。」
「ふ~ん…。」
「ん? 何か興味なさそうだな?」

押上が私に顔を近づけてくる。何故だろう。少しドキドキする…。

「いや、その、イマイチ状況が飲み込めてないだけで…。」
「あ、何だ…。」

押上が顔を離すのとほぼ同時に、チャイムが鳴った。

「お、そろそろか。戻るぞ。」
「あ、うん…。」

すると、押上は私の腕を掴んだ。

「へ?」
「あ、最後に一つ言うの忘れてた。俺はそこまで良心的じゃないから、お前がこっちで言う『妖怪』だってことを隠すのには一つ条件をつけさせてもらうから。」
「条件…?」

すると、押上はとんでもないことを口にした。

「隠してほしかったら…しばらくの間、俺の彼女役をやってくれ。」
「…彼女役…?」
「ああ。ちょっと色々あってな。しばらくの間でいいから、しっかり頼むぜ。」

そう言うと、押上は私の腕を引っ張った。

「ちょっ、ちょっとそんなに速く行かないで、押上。」
「あ、俺のことは『押上』じゃなくて『都樹』で。」

少しだけ、胸が高鳴っているのが分かった。
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