ストーンメルテッド ~すべての真実~
 背筋が凍り付いた。砕けた心は、更に砕け、涙と言うものを無くした。

ヴィーナスを通り越した、真っ直ぐ先の向こうに見えるのは、死刑囚に使われる、頑丈に作り込まれた特別な処刑台だった。

「……何をボケっとつっ立っているのだ。ジュノを、あの、処刑台へ」

ヴィーナスは、眉を上げ、きつい口調で言った。

「はっ」

そして、再び、家来に連れられるがまま、華奢な足を前に進めた。

この時、カチリとした物音が響き渡った気がする。

 台の上は、寂れている。サビの臭いはプンプンと漂っていた。いや、これは、独特な鉄の臭いだった。良く見れば、深々とした赤い水滴が所々に、こびり付いている。これが、異臭の正体だ。

彼女は、家来により、手足胴体をしっかりと処刑台に取り付けられた、頑丈な手枷足枷、胴枷に嵌められた。

まさか、今日この日、二度に渡り、体を奇妙な道具によって嵌められる事になるとは。変な意味で、吹き出してしまいそうになる。


 ……処刑台とは、こういうものなのか?


愛もなく、ただ、冷酷な目線を送られて……今まで、何十人もの神の命がここで絶ったことだろう。


私も、同じ様に……恐らくは。
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