ストーンメルテッド ~すべての真実~
「無論」と、イヴが答えた。「闇の精霊・封印の扉を開いた犯人のしおこを掴めなければならんのだ。さもなくば、この日が沈む頃には彼女は処刑される。その為に協力願いたいのだ。私達をユグドラシルまで連れてっておくれ」
「貴重な人材である女神の命を救う為に、我が友がここへ参ったというのなら、我も聞き入(い)る他ないようだ。そのひしとした頼み、承いろう!」
プリュークスは、言うが否や大きな尾を振るって二人を蹴った。すると、その拍子に二人は投げ飛ばされて、丁度プリュークスの背中の上に乗らさった。
「そう言う割には、随分と乱暴じゃあないか、プリュークス!」カゲンはいった。
プリュークスは、矢の如く高々と空へ上りながら言いだした。
「文句を言うなら、ここから突き落としてやるぞ」
「それは、勘弁を……」
すると、プリュークスはカゲンの言葉を聞いて、思わずニヤついた。
しばらくすると、プリュークスは体を傾けて、真っ直ぐに空を飛びはじめた。
アムール国が遠ざかったころ、息を呑むほど美しい景色が広がっているではないか。
緑の生い茂る森、広大で真っ青な海、そして様々な異国と民の姿が見下ろせる。
しかしイヴは、それどころではないと言ったように、カゲンの肩の上に飛び乗ったまま、震えていた。
そこでカゲンは悪巧みを抱いた少年のように、「高いところが怖いのかい?」と聞いた。
「な、何を言う!」イヴは叫んだ。「この私が、怖いだと? よもや……そんなことがある筈がない」
すると、プリュークスはカゲンのその悪巧みに乗ったように、言いだした。
「イヴは昔からの高所恐怖症だ! まあ、そんなことは当然だがな。犬っていう生き物なんぞ臆病なもんさ!」
「なっ、何を……プリュークス殿!」
と、イヴは言い返したが、プリュークスは、くく、と笑うばかりであった。
そんなことをしている内に、一行は真下に目的地が見下ろせる所まで着いた。
そこは何億年も何億年もの歳月、広大に育った大樹に広がる国、ユグドラシル。
トルネコの木の周囲に取り囲まれたシャボン玉状の膜は、ドラゴンの翼によりすごい勢いで破れた。カゲンは思わず見上げた。だが、すぐに修復されシャボン玉状の膜は元通りになっていた。
本当に様子がおかしかったのは、それではなく、ドラゴンの方だ。ドラゴンは、先程の衝撃を受けた拍子に意識を失っていた。
そのまま、急落下する。
カゲンは驚いて、眼下を見下ろした。
鮮やかな緑の草で覆い尽くされた地面が近づいている。
「おい、ドラゴン。何をしている!」
カゲンが叫んだ。
「意識がない」
まったく表情を変えず、イヴは言った。
「なんだと」
カゲンはパニックになって、言い返す。
その矢先、全身に激しい衝撃を受けた。骨が折れたのではないかと思った。
地上に不時着したのである。